経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の仕組みと税務上の取り扱い
節税のために「経営セーフティ共済に加入する」という話をよく聞きますが、実際に経営セーフティ共済に加入するとどのような効果があるのか、そもそも経営セーフティ共済とはどのようなものかについて解説していきます。
<ポイント>
✓ 経営セーフティ共済の目的
✓ 経営セーフティ共済のしくみ
✓ 経営セーフティ共済に加入することによる税務上の取り扱い
✓ 加入のメリット・デメリット
<ポイントの解説>
1.経営セーフティ共済の目的
取引先の会社が倒産したり、災害等で不渡りを出したりすることで、取引先が限られている中小企業は大きなダメージを受けます。大口の取引先が倒産することで、自社の経営も苦しくなり、最悪の場合は連鎖倒産してしまうことも考えられます。
そのような不測の事態に直面した中小企業が、必要な事業資金を速やかに借りることができる共済制度が経営セーフティ共済です。
2.経営セーフティ共済のしくみ
■要件
経営セーフティ共済の加入資格としては、1年以上継続して業務を行っている会社、個人の事業者、一定の組合が対象となり、業種ごとに資本金等・従業員数の加入制限が定められています。
なお、上記の資格を満たす場合であっても、以下のような場合には加入ができないのでご留意ください。
- すでに借入れを受けた共済金または一時貸付金の返済を怠っている場合
- 納付すべき所得税または法人税を滞納している場合など
■掛金
掛金は月額5,000円から200,000円の範囲内で、5,000円単位で自由に設定できます。掛金は総額が800万円に達するまで積み立てることができ、加入後に掛金を変更することも可能です。
なお、掛金には前納制度もあり、前納月数1カ月あたり0.9%に相当する額が割引されます。
■借入できる金額
借入の限度額は「被害額」と「掛金総額の10倍」のいずれか少ない額となっており、無担保・無保証で借入をすることができます。
また、取引先の倒産でなくとも、解約手当金の95%を上限に借入をすることもできます。返済期間については借入額により、5年~7年で返済を行います。
なお、本制度は取引先の会社が倒産等により売掛債権等の回収が困難となった場合についての貸付制度であるため、売掛債権等が生じない以下のような事業者は、共済金の貸付けの対象とならない場合があるため注意が必要です。
- 一般消費者を取引先とする事業者
- 金融業者、不動産業者
■解約について
解約をした場合には、掛金の納付月数・掛金総額に応じた解約手当金を受け取れます。自己都合の解約でも掛金を12カ月以上納めていれば掛金総額の8割以上、40カ月以上納めていれば掛金全額が戻ってきます。(解約はいつでもできます。)
3.経営セーフティ共済に加入することによる税務上の取り扱い
支払った掛金については、法人の場合は全額損金に、個人の場合には必要経費に算入することができます。
なお、解約した際に受け取る解約手当金は、法人の場合は益金の額に、個人の場合は事業所得に算入されます。掛金を支払っているときは、掛金が損金又は必要経費となるため納税額を抑えることができていますが、解約時に一気に収入に計上し課税されるため、税負担としてはトータルでみると大きく変わらず、課税を将来に繰り延べているだけにすぎないため、トータルで節税をしたいという方が加入するものではないと思います。
税金だけで見ると課税の繰り延べではありますが、40カ月以上掛金を納めていれば解約した際に掛金が全額返ってくるため、長期間加入するのであれば資金面で損はありません。
また、課税を繰り延べながら、資金に困った際に申請から短い期間で借入をすることができるため、資金に余裕がある場合には積極的に活用してもらいたいと思います。
4.加入のメリット・デメリット
加入によるメリット・デメリットについては以下の通りです。
■メリット
- 40カ月以上掛金を納めていれば、損をせずに取引先の倒産時などに借入ができる。
- 借入までの期間が金融機関から融資を受けるよりも短く、無担保・無保証で借入ができる。
■デメリット
- 40カ月以上掛金を納めなければ、掛金の全額が戻ってこない。
- 申告の際に提出する別表等が増えてしまう。
- 共済金の借入は無利子であるが、借入後は共済金の借入額の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除される。
今回は経営セーフティ共済について説明しました。加入時から解約時までのトータルで見ると、税金のメリットは大きくありませんが、何かあった際にすぐに借入ができるというのは大きなメリットです。
加入を検討されている、あるいはもっと詳細を知りたいという中小企業・個人事業主の方は大阪・梅田の税理士法人スフィーダまでご連絡ください。(初回のご相談は無料です。)
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